編曲委託曲・ブラームスの万華鏡について

【メドレーの演奏経緯】

これまでにJupiter Trio.のコンサートでは、ベートーヴェン、ドビュッシーをテーマにプログラムを構成したことがあり、今回、メインとなる三重奏曲をブラームスの第1番を選んだこと、また、7月の東京の公演では、ブラームスとの関係があった作曲家であるヴァルター・ラブルの作品も組み込んだことから、この夏の2公演ではブラームスをテーマにプログラムを構成することにしました。

3月のリサイタルの際のアンケートの中で、‘‘知っている曲をもっと聴きたい”という声をいただきました。三重奏曲だけでは、クラシック音楽に詳しい方でなければ知らない曲ばかりになってしまいます。私たち Jupiter Trio.としても、普段クラシック音楽のコンサートに足を運んだり聴いたりすることがあまりないお客様にも楽しんでいただきたい・クラシック音楽の魅力を伝えたいという思いがあり、オーケストラやソロ曲、テレビ等でも使用されている有名曲を含んだブラームスメドレーを演奏するに至りました。

【完成までの流れ】

4月…桐朋の同級生で、現在は大学院で作曲を専攻している白井妙佳さんに編曲を依頼。

6月末…初版が完成。

7月上旬…曲のカットや音の修正等の改訂作業。

7月20日…『ブラームス名曲集』と題し、5曲からなるメドレーをコンサートで演奏。

7月中旬…ブラームスの人生に沿った再構成版の編曲作業開始。

7月末日…再構成版の初版の楽譜が完成。

8月上旬…音の修正作業、楽章の題を命名、プログラム作成等。

8月20日…『ブラームスの万華鏡〜17の名曲より「晴天」「愛」「親交」「円熟」〜』と題し、17曲からなるコラージュメドレーをコンサートで演奏。

【ブラームスの万華鏡 楽章及び楽曲構成】

第1楽章「晴天」
〜3曲ともハ長調で登場し、堂々と、混じり気のない晴れやかさを印象付ける楽章〜 1. 交響曲第1番 Op.68より第4楽章  (1876年作曲、ハ長調→編曲・原調のまま) 2. ピアノソナタ第1番Op.1より 第1楽章  (1852年作曲、ハ長調→編曲・原曲のまま) 3. ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ Op.24より 第25変奏  (1861年作曲、変ロ長調→編曲・ハ長調) 第2楽章「愛」
〜温かみのある調性で、愛に関係する曲が次々と登場する楽章〜 4. ドイツレクイエムOp.45より第4曲  (1868年作曲、変ホ長調→編曲・変イ長調) 5. 5つの歌Op.71より第5曲「愛の歌」 (1877年作曲、ハ長調→編曲・変イ長調) 6. ハンガリー舞曲 WoO.1より第1番  (1869年作曲、ト短調→編曲・嬰ト短調) 7. ハンガリー舞曲WoO.1 より第5番  (1869年作曲、嬰へ短調→編曲・嬰ト短調) 8. ハイドンの主題による変奏曲 Op.56aより 第5変奏  (1873年作曲、変ロ長調→編曲・原調のまま) 9. ピアノトリオ第1番 Op.8より第1楽章  (1854年作曲→1889年改訂、ロ長調→編曲・原曲のまま) 第3楽章「親交」
〜第1楽章ハ長調の属調であるト長調で、親交のあった人へ贈った曲が登場する楽章〜 10. 大学祝典序曲 Op.80 (1880年作曲、ハ長調→編曲・ト長調) 11. ヴァイオリンソナタ第1番Op.78 「雨の歌」 より第1楽章 (1879年作曲、ト長調→編曲・原曲のまま) 12. 5つの歌曲 Op.49より第4曲「子守歌」  (1868年作曲、ト長調→編曲・原調のまま) 第4楽章「円熟」
〜円熟期に書かれた曲が、1曲ごとに調が変化し紆余曲折しながら冒頭と同じハ長調に戻っていく終楽章〜 13. チェロソナタ第2番 Op.99より第1楽章  (1886年作曲、ヘ長調→編曲・変ホ長調) 14. クラリネットソナタ第1番 op.120-1より 第3楽章  (1894年作曲、変イ長調→編曲・原調のまま) 15. クラリネット三重奏曲Op.114 より第1楽章  (1891年作曲、イ短調→編曲・原調のまま) 16. 交響曲第3番Op.90 より第3楽章 (1883年作曲ハ短調→編曲・原調のまま) 17. 6つの小品 Op.118より第2曲 「間奏曲」  (1893年作曲イ長調→編曲・原曲のまま) 18. 交響曲第1番 Op.68より第4楽章  (1876年作曲、ハ長調→編曲・原調のまま) —————————————————— 「晴天」の意 ・交響曲第1番が「ベートーヴェンの交響曲第10番」だと呼ばれ、高く評価されたため。 ・ピアノソナタ第1番がブラームスの自信作であるため。 ・ヘンデルの主題による変奏曲が、変奏曲の大家であるブラームスが音楽的内容の頂点を極めた作品であるため。 「愛」の意 ・ドイツ・レクイエム第4曲の「あなたのいますところは、どれほど愛されていることでしょう」から。 ・愛の歌で母国と決めたドナウ川流域のオーストリア・ハンガリー帝国に対してそれ相応に敬意を表したため。 ・ドイツ音楽のみならず、あらゆる民族音楽を愛して編曲したハンガリー舞曲から。 ・古楽に専心し(愛し)、変奏曲形式を好んだため。 「親交」の意 ・大学祝典序曲は、名誉博士号の返礼として作曲されたため。 ・ヴァイオリンソナタ第1番 第2楽章は、(※メドレーでは第1楽章が登場するが)主題を病床にあったクララ・シューマンの末っ子を見舞うとともに送ったため。 ・子守歌は、ブラームスの友人ベルタ・ファーバーに次男が生まれたことを記念して作曲されたため。 「円熟」の意 ・ブラームスの円熟期に作曲された曲が多いため。
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